さをり織りの日の翌日、朝から2人分のお弁当を作って、1泊の山登りに出かけた。1日早く大阪を出て、二上山から金剛山へと山越えをするというIさんと、奈良の御所駅で待ちあわせていた。予定より15分ほど遅れて駅に着くと、Iさんは少し前に到着していて、駅前のガードレールに腰掛けて煙草を吸っていた。
夜の仕事を終えて、家に帰って荷物を作り、風呂に入ってから、一睡もせずに家を出たのが、朝の8時だったらしい。予定より出発時間が遅れたのとテントや食料を入れた荷物がけっこう重く、二上山を登り、峠を越えて葛城山頂に登ったところで日が暮れた。彼女から、万が一の時の為にルートの詳細ももらっていたが、心得もないため、そんなに歩くんだというくらいにしか見ていなかった。
あらためて一緒に歩いてみて、Iさんの体力に目を見張った。徹夜明けでよく、二上山から葛城山まで登り切ったなあと思う。金剛山なんてとんでもないよなあ。
彼女の疲れもあったのだろうし、山歩きの経験なしの私に合わせてくれて、まずは、金剛山の麓にある<風の森>までバスで行き、そこからもう一度葛城山の麓まで歩いて戻ってくることにした。風の森を抜けたところに高鴨神社があり、そこの主のような鴨が参道にいて迎えてくれた。神社を出てお弁当を食べ、葛城古道を歩いた。高天彦神社と葛城一言主神社を参拝した以外はひたすら黙々と歩いていた。
山間にある高天彦神社に行くときは登りも多く汗をかいたが、それ以外はほぼ平地で荷物の少ない私はそれほどの苦もなく歩くことができた。
高天彦神社を出て畑のそばの道を通っていると小さな蛇がからだの一部を車にひかれたようで内臓が少しでていた。躊躇しつつも車がまた通るかもしれない道から畑の方に逃がしてやり、気休めでもヨモギの葉っぱをまいてやり傷が癒えるようにとお祈りした。そのあと林のなかを歩いていると今度は小さなモグラが死んでいた。土を掘って埋めた。もう一度あるかなあと思っていると、車道を歩いてしばらくすると、向こうに黒いものが横たわっている。タヌキかなあと見てみると、黒猫の死体だった。猫は苦手だった。軍手をIさんに渡して、抱き上げてもらい、近くの畑の草むらに埋めた。
車でも動物の死体をみることがあるが、いつも通り過ぎるだけで何もしてやれず、せめてゆっくり歩いているときくらいと葬ることができてよかった。