樹心ちゃんの電話があった翌日
モモの家で
「一万年の旅路」の朗読会があった。
ネイティブアメリカンが安住の地を求めて驚くような距離を長い年月かけて移動しながら
学びを繰り返しながら
その長い年月の物語を
「口伝えの物語」として伝えてきた。
そこには叡智がたくさんつまっている。
毎月、少しづつゆっくりと輪読しながら
ひとつひとつの言葉やその意味を問いながら
詠み進めていくスタイルがなんとも味わい深い
そんな読書会をサユリさんは毎月続けている。
その日読んだのは
「水のほとり」という章だった。
大海にたどり着いた一行は「かなたに広がる大いなる島」への思いで喜んだのもつかの間、
その道すがらに恐ろしい思いをしてなかまたちをも失った男と出会う。
そしてその恐怖の体験を聞かされ、衰弱した彼の様子を見
この行き先が容易な道でないことを知るのだった。
しかしこの一行は、長いたびの中で様々な体験を繰り返しており
学びを繰り返していた。
そしてトーキングサークルをはじめる。
「一族は火を囲んで丸い輪をつくり、それぞれが他の全員を注意深く見まわした。そして彼らは、それまで学んだとおり、前のものが話し終えるのを静かに待って一人一人意見をのべた。沈黙のうちに耳を傾けることが、各自の宿した智恵を包み、最後には<一族の輪>に含まれるあらゆる智恵が語りつくされるのである・・・ 中略
・・・以前、大騒ぎするばかりで、智恵など少しも聞こえてこなかったときのことが思い出された。今、互いの話に耳を傾ける静かな心の輪を考えると自分たちの道の真価がかみしめられるのだった・・・」
この章を読みながら
私たちの実際の場もあたたかく、安心できる空気が満ち足りているのを感じていた。
私が私であること
それを許される場で人は安心する。
それが 輪になり話し合う場〈トーキングサークル)なのだろう。
そこで人は癒される。そして真実のじぶんを取り戻す。
そして希望を見るのだ。
何をすればいいのかはそこでははっきりと分かる。
ひとりでなく大勢で生み出すものがそこにはあるのだ。
暖かい場で私は安心していた。
そして思った。
こういうトーキングサークルを
企業や
国会や
学校や
いろいろな場でやっていったらいいなあ。
みんなじぶんを取り戻していける。
そして勇気を出して今までに無い選択をすることができる。