モモ あの人この人  その1 山根 淳子さん


取材・文 : 鈴木輝子

第1回の主人公は、「モモの家」の日常を支え、台所を預かるお母さん的存在、「手仕事カフェ」「モモカフェ」主催のやまねちゃんこと山根淳子さん。やまねちゃんの印象を一言でいえば、やさしくもきびしい、しっかり者のお母さん。実際にも2女1男の、子育てまっ最中のお母さんです。

*以降、「モモの家」=モモと省略。

写真:やまねちゃん

やまねちゃん、布を求めてモモに来る。

やまねちゃんがモモと出会ったのは2008年ごろ。当時、やまねちゃんはオーガニックカフェをやっていたのですが、自分が使うものとお店での販売用「手作り布ナプキン」を仕立てるため、無漂白のネル生地を探していて、ある本に出ていた「布ナプキンの販売店一覧」に「モモの家」を見つけ、初めてモモにやって来たそうです。

「でも、初めの2年ぐらいは、ほんの数回布を買いに行っただけで、あまり(モモに)行くことはなかった。モモもあんまり開いて(営業して)いなかったし」

おからコロッケでモモデビュ~!

 モモでランチをやるようになったきっかけは?

「モモでランチをやるきっかけ?きっかけは…なんだっけ?(横にいたしほさん※に向けて聞く)」

「(しほさん)たしか、やまねちゃんが『ランチ食べたい』って言って、その時はモモではランチをやってなくて、やまねちゃんがお店してたの聞いてたから、私が『じゃ、やまねちゃんが作って!』って」

「…で、すぐ数日後に、ランチを作ることになったわけ」

 「作って!」と言われていきなり作ることになった…それで、「モモ・初メニュー」は何だったのでしょうか?

「(しほさんとしばし思い出すための相談後) おからコロッケとポトフ。…と、パン」

パン?

「(しほさん)そう、その時ランチ食べたみんなも「パンなんだぁ~」って珍しがってた」

「で、初めての台所で初のランチが何とか完成できそう!っていうときに、トラちゃん※が『これ、盛り付け考えて作ってるぅ?』って、“キビシ~イ”ひとこと。――じつは、数字が苦手で、8人分以上になると『いっぱい』という認識になるので、その時は『いっぱい』作って盛り付けの時適当に分けようと思ってたの」

「あと、パンにしたのは…店のランチでもパンを出していたから。その後は、モモではご飯の方が喜ばれそうだったからご飯にしたけどね」

※(しほさんとトラちゃんはモモの家の運営メンバー。トラちゃんは食堂をやっています)

「料理人」やまねちゃん

 お店をやっていた時のメニューとモモでのメニューとでは違いがありますか?

写真:やまねちゃんのカフェ「店でも野菜中心のランチを出していた。姉が長野で農業をやっているので、そこでできた野菜を使った料理。でも、“野菜だけ!”なんて決めてはいなかった。お肉も使っていたし、何より“食べた感じ”のあるもの、お客さんが食べて満足してくれることを一番にしていた。そして、それは今も変わっていない。モモでのメニューも、肉はあまり使わないけど、“野菜料理”ということにこだわるのでもなく、何より食べてくれる人の満足を一番に考えて出している」

 特に「こうしたい!」と思っていることや新メニューの予定はありますか?

「特にこだわりはないけど。ランチやるなら、メニューには食べたことのない味を一つは入れたい。だから3年分ぐらい全メニューを書き留めている。…さすがに今は難しくなってきたけど、前は、メインメニューは1回限りに決めていた。あとはその時々で手に入る季節の野菜を使った家庭料理を出すこと。そして、食材はできるだけオーガニックのものを使い、加工品はあまり使わないで、自分が作れると思ったものは自分で作る。たとえば、この春は桜の葉の塩漬けを作った(「モモ便り」201号参照)。元々、梅干しを漬けるとか味噌を作るとか、自分でできると思うことは自分でするのが自然だった。でも、出来がいまひとつだったり、あまりにも面倒だなと思ったら加工食品も適当に使うし、本当にこだわりはない」

 この前、「生きものカフェ」(モモではおなじみの「生物多様性」に関する企画)関連で、韓国からの団体さんを含め30名近いお客さんがあった夕食会の“シェフ”をトラちゃんと二人で務めましたね。片づけ終わったのは午前3時頃だったそうだけど、その時はどうでしたか?

「メニューは、切り干し大根、ヒジキ、お浸し、おからコロッケ、サバの梅フライなど、日本のお母さんが作る家庭料理にした。とても喜んでくれたけど、韓国ではたくさん食べると聞いていたので多めに盛り付けたら残す人が多かったので、やはり年齢・性別など(その料理を)“食べる人”を見ないといけないと思ったし、日本の家庭で昔からあった“残さずいただく”というマナーに沿った量や出し方をするべきだったかも」

 ところで、やまねちゃんはいつごろから料理に興味を持ったのでしょうか?

「うちは、母は料理は全然。私も高校までは興味なかった。でも高校以降、外で食べることで美味しいものを知ったり、バイト先のお店で美味しいものを作ることを覚えた。それから自分で料理するようになった」

 お子さんにも料理を教えてる?

「子どもは、上と下の女の子は興味ないみたいだけど、真ん中の男の子は結構いろいろ作る。子どもに特別に料理を教えようとは思わないけど、一応、ご飯が炊けてお味噌汁が作れたらいいと思う」

手で作ることは自然なこと

写真:やまねちゃん糸紡ぎやまねちゃんといえば、もう一つ、「手仕事カフェ」の「手仕事」(料理も本来は「手仕事」といえるのでしょうが)がありますが、彼女はもともと服飾を専門に学んだ人。モモにやってくるきっかけとなった布へのこだわり(?)もこの辺からくるのかもしれません。

彼女の手で作られるのは、味噌や梅干しだけでなく、いつも身に着けている割烹着やスカート、箸袋やルームソックスなど、身の回りにあるさまざまな物たちです。

 

「手仕事」で作るものは?

「元々洋裁をやってたから、大抵の洋服は。それと身の回りのもの…棚とか机とかも。どんなものでも、自分でできそうと思ったら自分で作るのが自然。自分で作る方がぴったり欲しいものができるから。失敗しても納得できるしね」

 この前、すごくきれいな翠(みどり)色をした着物を縫っていましたよね?

「草木染の浴衣ね。依頼があったので、初めて和裁もやってみた」

 街で見かける服で「いいな」と思うようなのがあったら?

「そんなに『いいな』と思うことはないけど、本なんかは見てる。で、その中でこれ作ろうかな、と思うものがあったら作る。この間も、娘が翌日に着るための、お出かけ用の服を一晩で作った」

…服って、一晩でできるものなんですね…「手仕事カフェ」での手仕事は?やってみたい企画や作りたいものがありますか?

「編み物でもなんでも、本当はもっとやりたいけど、カフェの仕事で手が回らない。手仕事をやる人が誰か来て、(カフェの時間中に)じっくりやってくれたらいいと思っている。糸車を増やしたし、糸紡ぎをもっと頑張りたいな~。手仕事のワークショップ企画、持ち込み歓迎です!」

料理も、手仕事で作るものも、やまねちゃんにとっては、必要なもの、自然なもの。――自分が使う、自分の身の回りの物を、自分の周りにあるものから作り出す。
やまねちゃんにとって、作ること・食べることは、全てが具体的で無理なく自然なことのように感じました。「こだわりはない」「計画性ない」という言葉も、「無理やりでなく自然な方へいけばいいんじゃない?」という風に聞こえました。

  • ★手仕事カフェ…毎週水曜日12:00~18:00(17:00ラストオーダー)
  • ★モモカフェ…毎週木曜日14:00~18:00(同上)
    (主なメニューはモモの家の庭で取れるハーブのお茶や手作りのケーキ、手作り味噌汁とおにぎりなど。
    手仕事カフェの日は、編み物、糸紡ぎほか、いろいろな手仕事もどうぞ。)
  • ☆モモランチ(木曜・要予約)はトラちゃん、やまねちゃんが協力して作っています。
  • ☆毎月発行の会報「モモだより」で、やまねちゃんの「縁側文化推進部」が読めます!

 鈴木輝子:

モモに来たのは最近の2012年。モモの家に係わるさまざまな人や、モモの家での色とりどり盛りだくさんな企画に興味があり、どうせなら自分がいろいろ参加して、その一端をほかの人にも紹介しちゃおう、と思って本コーナーを発案しました。モモに来たことのない方にモモの家の様子をお伝えするとともに、既にモモの家にかかわって下さっている方々にも、意外と知らない現場の裏エピソードなどを公開し、モモの家に対する興味を深めてもらえたらな~と思っております。

注:このコーナーは、インタビューの際の話し手の言葉を、聞き手である鈴木の判断で文章にしたものであり、会話を完全に再現したものではありません。

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